ペットを飼う上で、いつかは迎えなければならない時、寿命は必ず訪れます。
いくら覚悟をしていても実際に目のあたりにすると悲しさは想像以上で、
最期が可哀相だからもうペットは飼いたくないという方も珍しくありません。
普段は想像したくないかもしれませんが、最期の時に備えておくために、どのような症状があるのかご紹介します。
【横たわったままになる】
立つのがしんどくなり、座ったまま動きが少なくなっていき、最終的には横たわったままになります。
意識はあっても呼びかけに反応しなくなり、明らかに寝ている時とは様子が異なります。
特定の病気特有の症状ではなく、どんな状態でも起こりうる症状です。
【呼吸が荒くなる】
暑い時などに起こる舌を出してハアハアとなる謂わゆる”パンティング”とはことなり、しんどそうに肩で大きく息をするようになります。
心不全や呼吸器系疾患の末期で見られますが、他の疾患でも起こります。
酸素室に入れてあげることで少し楽になるかもしれませんが、普通のお宅にはないと思いますので、できるだけそっとしてあげる方がよいかと思います。
【下痢や嘔吐を繰り返す】
腫瘍や消化器系の疾患、腎不全や肝不全などでよく見られます。食欲が廃絶に近い状態のことが多いので、
下痢は一般的に見られるような下痢とは異なり、ドロっとしたタール状のものが自然と垂れてくるようにでることもあります。
嘔吐は、急激に頻回で吐くというよりは、”慢性的にしていた嘔吐の延長”といった表現がイメージに合うと思われます。
【痙攣を繰り返す】
腫瘍や頭蓋内の疾患の他、腎不全や肝不全などで体内の毒素が蓄積した場合などでも起こります。
出始めの時は薬で抑えられますが、だんだんと頻度が増し、薬でのコントロールが難しくなってきます。
【水も口にしない】
基本的に食欲が廃絶し、水も飲まなくなってきます。横たわって動かなくなってくると独特な口臭がしてくることもあります。
ただし、これらの症状は、死の直前に特有の症状ではなく、治療をすれば状態が改善されたり、もしくは完治する疾患の可能性もあります。
飼い主さんへのメッセージ
実話として、以前飼っていたワンちゃんが、亡くなる前日に立てなくなった経験をした方が、
他のワンちゃんが同様に立てなくなったため、最期だと諦めていたら、
命には何の別状もない椎間板ヘルニアで立てなかった、ということがありました。
幸い、後遺症もなく元気に戻りましたが、
最期は無理な延命をせずゆっくりと自宅で…という優しさから治療が遅れ、
もう少しで二度と立てなくなるところでした。
動物の最期を見る機会は、普通はそうそうあることではないので、思い込みが治療の遅れにつながることもあります。
最期に不必要な痛みを増やさずお家でゆっくりと、という考えは十分尊重すべきだと思われますが、
そのような考えの方にとっても、病院に行くことが必ずしも悪とは限りません。
もし、助けることができなくても、苦しい時間を伸ばすだけの延命治療ではなく、
少しでも苦痛を和らげる治療で、最期の瞬間を少しでも楽にしてあげれるからです。
最期に、ヒトと違ってワンちゃんの場合は、安楽死という選択肢もあります。
これには賛否両論あると思いますし、動物病院によっても絶対にしないところもありますし、
どの時点で勧めるかは様々です。獣医療の先進国と言われるアメリカでは、
腫瘍などで回復の見込みがないと診断された時点で安楽死を提案されるケースもあるようです。
自然に最期までというのも全く間違っているとは思いませんし、
例えば痙攣を繰り返し苦しみ耐えて死を待つだけの状態なら楽に眠らせてあげるというのも全く間違っていないと思います。
早すぎる安楽死の選択は、無責任と言えるかもしれませんが、少なくとも現代の日本においては、ヒトでは選択できない選択肢であり、
自分のエゴを捨てその子のことを真剣に考えて出した答えなら、最大の優しさと言えるかもしれません。
長い時間を共に過ごしたペットの最期というのは、今後いつまでも最も印象に残る瞬間の一つとなります。
そこで後悔があると、後々にその子のこと自体が辛い思い出となりかねません。
最期まで治ることを信じて、最大限のリスクを負いながらも最大限の治療をすることは何も間違ってませんし、
そうすることで後悔のない最期を迎えられる方もいます。
しかし、同じことをしても不必要に苦しめてしまったと後悔する方もいます。積極的治療を避け、負担をかけない治療に専念した場合も同様です。
皆さんにお伝えしたいのは、大切に考えた結果出した結論はどの選択肢であっても間違えではない、
だから、後で後悔することなく正しい決断をしたと胸を張って欲しい、
そして後悔しないことでその子と過ごした思い出を、最良の思い出にすることができるということです。
たぶん、亡くなった動物も、思い出が最良になることを一番に望んでいると思います。
最後に一つ…大切に考えてという言葉を繰り返しましたが、動物のこと考えて悩むあまり、また必死に通院を続けるあまりに、
飼い主さんが精神的にも体力的にも経済的にも疲弊しきってしまって、日に日に表情が暗くなってしまうことがよくあります。
さらに経過の長い慢性的疾患ほど、少しの体調の変化に一喜一憂してしまい、より一層疲弊することもあります。
結果、その子の思い出が辛いものとなることに繋がってしまいます。
そうならないためにも、(難しいかもしれませんが)ある程度気楽に無理なく向き合うことも大切かもしれません。
少しでも気楽になれるポイントとしては、慢性疾患は調子の波が絶対にありますが、調子のいい時に喜びすぎないことです(喜びすぎると、悪い時にその分凹むので)。
こうした精神的ケアは、ここで書くような安易な文章では無理かもしれませんが、
無理のない範囲で大切に思う気持ちを表情してあげることが、飼い主さんの幸せに繋がり、
そして結果的にそのこと自体がその子自身の幸せに繋がるのではないかと思います。