歯周病は中〜高齢のワンちゃんの多くがなる病気です。3歳以上のほとんどのワンちゃんがなっているとの報告や、2歳以上の80%以上が歯周病になっているという報告もあり、ワンちゃんの歯周病の多さを物語っています。
歯周病については、1940年頃からにすでに外科的治療をおこなうべき疾患と指摘されており、放置すると歯肉炎、口臭、歯の喪失、根尖周囲膿瘍(歯の根元に膿が溜まりそれが周囲に波及することで眼の下や鼻の腫れや瘻管形成(膿んでくることで穴があく)などがおこる)、下顎骨の歯周病性骨折の他、心臓や腎臓などに二次的に疾患を起こすこともあります。
犬の歯石を予防するには…
①普段からハミガキなどで歯垢(しこう)の段階から除去する
→歯垢は、細菌や汚れの塊ですが、口腔内の細菌は歯垢の中で細菌が有利に増殖できる環境を作りますので、炎症などが起こりやすくなります。
②歯石が付着してきたら除去する
歯垢は3〜5日程度で歯石になります。歯石が付着することでより一層歯垢が付着するようになり炎症などが起こりやすくなります。歯石はハミガキでは除去できません。
歯石を除去するには?
①自宅での除去(スプレー)
歯石除去スプレーや液体が販売されています。使っている内に、ハミガキ中に歯石が取れたなどの声を聞きます。様々な商品がありますので、試してみてもいいかもしれません。
②自宅での除去(ハンドスケーラー)
歯医者さんでよくみる見る細く尖った金属の棒で歯石をとる方法です。ハミガキによく慣れていてあまり動かない子ならある程度は可能ですが、見えるところしかとれませんし歯肉などを傷付けることもありリスクもあります。
③病院での除去(要麻酔)
動物病院で歯石除去を行う場合は、超音波スケーラー(ヒトの歯医者での歯石とりと同じ方法と思えばいいと思います)を使うことが多いと思います。動かずに口の中を処置することはできないので全身が必要となりますが、隅々まで歯石をとることができますし、動揺歯(歯肉に炎症を起こしてぐらついている歯は将来的に歯肉の悪化に繋がりますので抜いた方がよい)も同時に抜歯できますし、ポリッッシング(歯表面の研磨。歯石除去した歯の表面は粗造になるため歯石が付きやすくなることがあるので研磨することで歯石の付着を軽減できる)を同時にすることで今後の
ケアにも有効となります。
全身麻酔になりますので、そのリスクは伴いますが、歯周病に伴う病気のリスクを考えればある程度歯石が付着すれば病院での歯石除去を行った方がよいでしょう。
麻酔のリスクを恐れて歯石を放置し続けた結果、眼の下などに穴が空き、麻酔下での処置を避けられなくなった上に、よりリスクの高い年齢での麻酔になってしまうことも珍しくありません。
費用は抜歯の有無などによって異なってくると思いますし病院によってもかなり異なりますが3〜5万円程度かと思われます。
まとめ
歯石の除去は、いわば”お口の中の大掃除”です。そのあと放置すればまたすぐに歯石が付着してきます。
できるだけ麻酔での処置をしなくて済むよう、普段から予防につとめましょう。
歯石が付かない予防の最も良い方法は、ブラッシングです。歯垢が3日で歯石になることを考えると毎日〜1日おきでのハミガキが必要ですが、ワンちゃんの性格的に不可能なことも多くあると思います。
そういった場合は、療法食や洗口液、ガムなどといった商品も販売されています。たくさん商品があり価格も様々ですが、比較的効果の高いと言われているものもあります。選ぶ際は、メーカー独自の治験で、効果をアピールしているものもありますし、アメリカでは獣医歯科学評議会VOHCという機関が一定の効果のある商品を認定しています。日本にはこういった機関はありませんが、アメリカで認定された商品が多く輸入され販売されていますので、こういったものを参考に選ばれてみてもとは思います。